
森の中に、身なりのいいキツネがいました。
キツネはいつも笑顔で、仲間たちと楽しく過ごしていました。
でも、誰かが「お金の話」を始めると、キツネはすっと話題を変えました。
「お金の話は、ちょっと…ね」
「そんなことより、今日の夕焼けがきれいだったよ」
でも、誰も気づいていませんでしたが、キツネの心の中には、
誰にも言えないお金の不安がありました。
貯金は少なく、仕事も不安定。
でも、そんなことを話すと、笑顔が崩れてしまいそうで怖かったのです。
ある日、キツネは森の奥で、静かに土を掘っているモグラに出会いました。
モグラは何も言わず、ただ土の中に耳を澄ませていました。
キツネは、なぜかその静けさに安心して、ぽつりとつぶやきました。
「お金の話って、お行儀が悪いよね…」
モグラは、土の中から顔を出して言いました。
「キツネさん、お金の話って、お行儀が悪いって思われがちだけど、
ぼくはそうは思わないんだ。
暮らしのことを考えるって、とてもまじめで、やさしいことだと思う。
感情をぶつけるのは良くないけど、
落ち着いてお金のことを話したり、聞いたりすることは、生活の安心になるんだ。
逆に、お金の話を避けて、間違った認識のままでいると、将来困るかもしれない。
だから、お金のことを話せない空気のほうが、ずっと重たいんだよ。
ぼくは、聞くことしかできないけど、
それでも、君が話してくれるなら、その重さは、少しだけ軽くなると思う。」
キツネはしばらく黙っていました。
そして、モグラのそばに座って、
「実はね…」と、初めて自分の不安を話し始めました。
モグラは、何も言わず、ただ静かに聞いていました。
その沈黙が、キツネにはとてもあたたかく感じられました。
その日から、キツネは少しずつ、
「お金の話」を避けるのではなく、
「話してもいい場所」を探すようになりました。
🍃 知恵の葉っぱ:お金の話をするのは、悪いことではない
このお話は、お金の話に抵抗を感じて、一人で不安を抱えている人に読んでほしい物語です。
日本では、お金の話をすることが、
どこか「はしたない」「行儀が悪い」と思われがちです。
学校でも、家庭でも、
暮らしの中でお金について話す機会は、ほとんどありません。
でも、話さないまま大人になると、
不安のかたちも、間違った思い込みも、そのまま心の奥に残ってしまいます。
お金の話は、暮らしを守るための、静かな準備です。
正しい知識があれば、
税金や物価の変化にも、少しずつ備えることができます。
身近な人や、信頼できる人と、普段からお金の話をすることで、
不安の輪郭が、少しだけやわらかくなるかもしれません。
モグラのように、静かに耳を澄ませてくれる人や、
話してもいい場所が、あなたのまわりにひとつでも増えますように。
