
ウサギは、森の中を走っていた。
あっちでも誰かが新しいことを始めていて、
こっちでも誰かが成果を出していた。
「あのリスは投資を始めたって言ってたし、キツネは副業で稼いでるらしい。」
「みんな、すごいなあ」
「わたし、何もしてない気がする…」
ウサギは、胸の奥がざわざわして、
もっと何かしなきゃ、と足を速めた。
でも、どこに向かえばいいのか、わからなかった。
そんなある日、ウサギは一匹のカメと出会った。
カメは、森の小道をゆっくりと歩いていた。
「カメさん、どうしてそんなにゆっくり歩いてるの?」
「みんなどんどん先に行ってるよ?」
ウサギは、思わずそう尋ねた。
カメは立ち止まり、空を見上げて言った。
「うん、たしかに、みんな速いね」
「でもね、ぼくは、自分にできる歩き方で、ちゃんと進んでるんだ」
「焦るときって、誰かの地図を見てることが多いんだよ」
「でも、大事なのは、自分の地図をよく見ること」
「やりたいことは何か、どんな環境にいるのか、
どんなものを持っているのか——みんなそれぞれ違う」
「だから、自分の地図をちゃんと見て進むことが、大事なんだよ」
「自分の地図を見てみるとね、
いまの自分にできることが、ぽつんと見えてくるんだ」
「それは、小さな石みたいなものかもしれないけど、
自分の手で拾った石は、ちゃんと意味があるんだよ」
ウサギは、カメの言葉を聞いて、しばらく黙っていた。
そして、池のほとりにしゃがみこんで、小さな石をひとつ拾った。
それは、少し欠けていたけれど、手に馴染む形だった。
「これ、私の石かな…」
ウサギは、初めて少しだけ、心が静かになった気がした。
カメは、何も言わず、ウサギの隣に座った。
その静けさが、ウサギにはとてもあたたかく感じられた。
ウサギは、石をそっとポケットにしまった。
そして、カメと並んで、ゆっくり歩き出した。
焦りはまだ、風のように吹いていたけれど、
その風に飛ばされないように、
自分の地図を見ながら、歩いてみようと思った。
🍃 知恵の葉っぱ:焦りの風が吹くときに
まわりが動いているとき、成功していると聞いたとき、
自分だけ止まっているように感じることがあります。
「何かしなきゃ」「このままじゃまずい」——
焦りの風は、静かな心をかき乱します。
でも、焦って動き出す前に、
そっと立ち止まって、自分の地図を見てみること、
それが、ほんとうの準備になります。
あなたは毎月、毎年、どんなことに、どれぐらいのお金を使っていますか?
やりたいことは何ですか?
どんな環境にいますか?
どんなスキルを持っていますか?
それによってお金の貯め方や守り方は変わってきます。
お金がどれだけ必要かも違ってきます。
自分の地図を見つめることで、自分の歩幅で進む道が、少しずつ見えてきます。
焦りの風が吹くときこそ、自分の地図を見つめてみよう。
それは、静かで確かな一歩になるから。
