『お金の寓話-感情編④』焦るウサギと、地図を見るカメ

ウサギは、森の中を走っていた。

あっちでも誰かが新しいことを始めていて、

こっちでも誰かが成果を出していた。

「あのリスは投資を始めたって言ってたし、キツネは副業で稼いでるらしい。」

「みんな、すごいなあ」

「わたし、何もしてない気がする…」

ウサギは、胸の奥がざわざわして、

もっと何かしなきゃ、と足を速めた。

でも、どこに向かえばいいのか、わからなかった。

そんなある日、ウサギは一匹のカメと出会った。

カメは、森の小道をゆっくりと歩いていた。

「カメさん、どうしてそんなにゆっくり歩いてるの?」

「みんなどんどん先に行ってるよ?」

ウサギは、思わずそう尋ねた。

カメは立ち止まり、空を見上げて言った。

「うん、たしかに、みんな速いね」

「でもね、ぼくは、自分にできる歩き方で、ちゃんと進んでるんだ」

「焦るときって、誰かの地図を見てることが多いんだよ」

「でも、大事なのは、自分の地図をよく見ること」

「やりたいことは何か、どんな環境にいるのか、

どんなものを持っているのか——みんなそれぞれ違う」

「だから、自分の地図をちゃんと見て進むことが、大事なんだよ」

「自分の地図を見てみるとね、

いまの自分にできることが、ぽつんと見えてくるんだ」

「それは、小さな石みたいなものかもしれないけど、

自分の手で拾った石は、ちゃんと意味があるんだよ」

ウサギは、カメの言葉を聞いて、しばらく黙っていた。

そして、池のほとりにしゃがみこんで、小さな石をひとつ拾った。

それは、少し欠けていたけれど、手に馴染む形だった。

「これ、私の石かな…」

ウサギは、初めて少しだけ、心が静かになった気がした。

カメは、何も言わず、ウサギの隣に座った。

その静けさが、ウサギにはとてもあたたかく感じられた。

ウサギは、石をそっとポケットにしまった。

そして、カメと並んで、ゆっくり歩き出した。

焦りはまだ、風のように吹いていたけれど、

その風に飛ばされないように、

自分の地図を見ながら、歩いてみようと思った。

🍃 知恵の葉っぱ:焦りの風が吹くときに

まわりが動いているとき、成功していると聞いたとき、

自分だけ止まっているように感じることがあります。

「何かしなきゃ」「このままじゃまずい」——

焦りの風は、静かな心をかき乱します。

でも、焦って動き出す前に、

そっと立ち止まって、自分の地図を見てみること、

それが、ほんとうの準備になります。

あなたは毎月、毎年、どんなことに、どれぐらいのお金を使っていますか?

やりたいことは何ですか?

どんな環境にいますか?

どんなスキルを持っていますか?

それによってお金の貯め方や守り方は変わってきます。

お金がどれだけ必要かも違ってきます。

自分の地図を見つめることで、自分の歩幅で進む道が、少しずつ見えてきます。

焦りの風が吹くときこそ、自分の地図を見つめてみよう。

それは、静かで確かな一歩になるから。

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