吉田松陰に学ぶ

ーまなびや たぬき堂のはじまりのきっかけ

私は、世の中の「なんで?」を考えるのが好きです。

自分の内側から湧き出てくる「なんで?」「本当にそうなの?」という感覚。

それが出発点となって、考え、学び、自分の中にある世界が少しずつ形や色を変えていくのが楽しい。

私がそんな「問いの力」に目を向けるきっかけになった人物が、吉田松陰でした。

幕末の動乱期にわずか29歳でこの世を去った彼は、知識を振りかざす人ではなく、問いを投げ、共に考え、学び合う教師でした。

今回は、そんな吉田松陰について、たぬき堂という場所が問いを育てる場でありたいという願いも込めて、お話したいと思います。

松陰の生きざま

吉田松陰は、1830年に長州藩(現在の山口県)に生まれました。

わずか10歳で藩校・明倫館の講師に抜擢されるという天才ぶりでしたが、彼の真骨頂は知識ではなく、その「在り方」にありました。

黒船来航の衝撃に揺れる幕末、松陰は身分も年齢も関係なく、誰とでも議論し、「日本はどうなるべきか」を真剣に考えました。

ペリーの黒船に密航しようとして捕まり、投獄されても、囚人たちと互いに得意なことを教え合う勉強会を開いて、学ぶことを続けました。

松下村塾では、先生としてではなく、自分も塾生の仲間として、塾生と共に学ぶという姿勢を大切にしました。

彼の人生は、常に日本の将来を考え、「本当にこのままでいいのか?」という問いをたくさんの仲間と共有した人生、と言えるでしょう。

その結果として、松下村塾はたった2年余りの開塾だったにもかかわず、のちに明治維新を成し遂げる多くの志士を輩出しました。

松陰が投げかけた問いたち

吉田松陰の言葉には、今の私たちにも響く問いがたくさんあります。

例えば

  • 「何のために学ぶのか?」
  • 「あなたの志はなにか?」
  • 「なぜ夢を持つことが大事なのか?」

彼の教え子たち――高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋らが、幕末の動乱から、日本を明治維新に導けたのは、松陰が彼らに「答え」ではなく「問い」を与え続けたからです。

答えは一人ひとりの中にある。

でもその答えを見つけるには、まず問いがなければならない。

そんなことを、松陰は自らの生き方で伝えてくれたように思います。

松陰に学ぶ、“問い”を育てる3つのヒント

①「正解」ではなく「納得解」を探す

松陰は、答えを押しつけませんでした。

それぞれの立場や価値観に耳を傾け、その人の納得のいく道を一緒に探しました。

「みんながそうしてるから」ではなく、自分の納得できる選択をすることは、今の時代にも大切なことです。

② 学ぶとは、「変わること」を恐れないこと

松陰は、生涯にわたって自分の考えを更新し続けました。

学ぶことで価値観が変わることは、恥ではなく成長の証。

今の自分と未来の自分が違っていてもいい。

変わり続ける勇気こそ、本当の学びかもしれません。

③ “問い”は誰かと一緒に考えるから育つ

松陰の松下村塾は、まさに“対話”の場でした。

一人で悩むより、誰かと語ることで新しい視点が得られる。

たぬき堂も、そんな対話の“きっかけ”を届けられたらいいなと思っています。

「まなびや たぬき堂」を開いたきっかけ

ある日、山口県の萩を訪れたときに、吉田松陰の生き方に触れ、「自分もこんなふうに、誰かの“考えるきっかけ”になれるような場所を作りたい」と思ったことが、まなびや たぬき堂のはじまりです。

私も松陰のように、誰かと一緒に問いを立てたり、考えたりできる場が欲しかったのです。

まなびや たぬき堂という名前には、“ちょっと立ち止まって考える小さなお堂”のような意味も込めています。

気軽に入れて、ふと自分を見つめ直せるような場所。

松陰が松下村塾で若者たちと学び合ったように、たぬき堂も“問い”を中心に置いた小さな学び舎でありたいのです。

たぬき堂では「自分の生き方」や「心の持ち方」について発信しています。

テーマはさまざまですが、どのお話にも共通しているのは「読んだあとに何か考えたくなる」こと。

お話の中に正解はありません。

でも、読んだ人の心に小さな“問い”の芽が残れば、それがいちばんの願いです。

答えよりも“考えること”を大切にする、そんな場所に育てていけたら嬉しいです。

おわりに 松陰の問いが今を照らす

「死して不朽の見込みあらば、いつでも死すべし。
 生きて大業の見込みあらば、いつでも生くべし。」

これは吉田松陰の有名な言葉のひとつです。

命を惜しまない覚悟がある一方で、信じた道を最後まで生き抜こうとする意志もにじんでいます。

私たちの毎日はそこまで劇的ではないかもしれません。

でも、「どう生きるか?」「何のために生きるのか?」という問いは、いつの時代にも通じる普遍的なテーマです。

吉田松陰のように、大きな志を持てなくてもいい。

でも、日々の中で「本当に大切にしたいことは何か?」と問い続けることが、人生を豊かにしてくれる。

まなびや たぬき堂が、その問いを持つきっかけになれば嬉しいです


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